CLグループE：カンプノウでは大人しいレンジャーズ

オシム監督のニュースは海外にも配信された様で、UEFAの公式サイトでも流れていた。　中村俊輔選手の所属するセルティックの怨敵（ちょっと言葉は大袈裟かもしれないが、宗教にからみ、しかも昔の労働者階級と中産階級との階級間の象徴として。　セルティックはカトリック、労働者階級を代表する）である、レンジャーズの監督は、先のスコットランドの代表監督を途中で辞めて、レンジャーズの監督になった、名監督と称されるウォルター・スミス。　

そのスコットランドはEuro2008の予備戦でこの11月17日、ホームにイタリア代表を迎えて、グループ・リーグ突破を目指す。　このグループにはフランスも入っており、死のグループともいわれているが、追い詰められているのはイタリア。　スコットランドはこの試合の準備で、代表選手が多く所属するレンジャーズとセルティックに、この試合前のリーグ戦の延期をしたほど、力が入っているし、世界最高のチーム、WC2006の優勝国、イタリアを迎えて緊張が高まっている。

オシム監督は逆にジェフ千葉の監督を辞めて、日本代表監督に。　オシム監督も見たであろう、CLグループ・リーグ第4節のバルサとレンジャーズの試合を見た。　レンジャーズのアイブロックスでバルサを迎えた試合では、レンジャーズは超守備的試合を展開し、バルサを封じ込め、スコアレス・ドロー。　口の悪い記事では、レンジャーズのサッカーはアンチ・サッカー”あれはサッカーではない”と評していた。　

カンプノウでのバルサは生き生きとしており、レンジャーズの選手はまるで借りてきた猫のよう。　セルティックとのダービーだと、レンジャーズは我武者羅に、執拗にフィジカルだのみの肉弾戦で、まるでピッチでの乱闘になるような戦いぶりをみせており、それを見た後に、この試合を見ると、あのレンジャーズはどこにと思うほど、大人しい。　マンマークではなくエリアでのプレシングをレンジャーズはとっており、プレッシングを歩幅1歩ぐらいまで、バルサの選手に迫るも、タックルも強引な足だしもせず、バルサの選手全てが、個人技に数段の違いを見せ付ける試合では、レンジャーズにはほんとどなす術がない。

前半6分、メッシのゴール左隅を狙ったシュートが少し甘くなったところを、走りこんできたアンリが手にあてたボールがゴールになった。　レンジャーズはハンドとアピールしたが、審判はそれに気がつかず、バルサが先制。　アナウンサーも、手にあてたゴールをアンリが凄く喜んだパフォーマンスは如何なものか？とコメント。　イギリスとスコットランドの選手はサッカーの発祥の地の選手なので、誇り高く、ハンドのジャスチャーでズルスルことはないともコメント。　その後、レンジャーズの選手はアンリだけには凄いタックルを2回はかけていたが、審判はイエローださず。　（写真は外国メディアで掲載されたものなので、文句が来たら削除します。）

ボール・ポセションもバルサが65％、シュートもバルサが2ケタなのに、レンジャーズは5本にもならないほど一方的な試合展開。　前半終了間際43分にバルサはイニエスタ、ロナウジーニョ、メッシ、ロナウジーニョ、メッシと流れるようなパスワークをPA内で展開して、文句ない2点目。　後半、レンジャーズは何回かFKを得たが、誰が蹴るのでしょうか？といわれる程キッカーはいないらしく、チャンスを生かすことはできなかった。　一方バルサは好き放題に攻め込む。　メッシのドリブル、ロナウジーニョのフェイント・・蹴るフリしてトントンとあしふみするだけでレンジャーズの選手を翻弄。　プジョルは真面目にディフェンス。　イニエスタの頭のイイ、スルドイ、パスワーク。　悔しい程のテクニックのオンパレード。

最後は双方チームとも若手を投入。　試合というよりエンターテインメント。　FWで真面目に守備もしていたのはアンリ。　ロナウジーニョが、レンジャーズの選手と争って、右コーナー脇まで、ボールを追って行ったパフォーマンスに、アナウンサーは”よっぽどロナウジーニョは今日は機嫌がよい”というほどで、観客からもその姿に、ロナウジーニョのコールがおきていた。　試合は静かに終了。　バルサの魅力が全開した試合だった。　

全体を俯瞰していると、この試合はアジアカップ2007の日本代表の試合を思い起こさせた。　バルサと日本代表の動きが重なる部分が多かった。　アジアカップ2007では、日本代表に対するアジアのチームは殆どが守備的、超守備的サッカーを展開して日本選手は攻めあぐねた場面が多かった。　バルサは攻めあぐねたというよりは遊んだというほうが正しいかも知れないが、パス回しの部分では日本代表を思い起こさせた。　オシム監督はバルサを一番手本にしたいと考えていた可能性がある。